ECAP 法によるアルミニウム合金の結晶粒微細化と機械

ECAP 法によるアルミニウム合金の結晶粒微細化と機械的性質
福岡教育大学 古川 稔
furukawm@fukuoka-edu.ac.jp
【1】はじめに
金属材料の結晶粒を微細化すれば、高温で超塑性が発現し、室温では高強度であることはよく知られてい
る。実用的には、高温で製品を製造するときは加工しやすく、室温で使用するときは材料を節約できるという利
点がある。しかし、以前は結晶粒微細化の方法は合金元素の添加や熱処理による方法に限られていた。1980
年代に超強加工による方法が見出され、この分野の研究が一気に活性化した。本講演では、超強加工法の一
つである ECAP(Equal-Channel Angular Pressing)法による微細化のメカニズムや得られる結晶粒径に及
ぼす種々の因子(プレスの回数、プレスごとの試料の挿入方法、添加元素等)の影響について、アルミニウム合
金を例に紹介する。
【2】ECAP 法の概要
ECAP 法は、図1に示すように材料に高圧をかけて金型内部の角度のつ
いたチャンネル(通路)を通し、屈曲部を通過する際のせん断変形により、
結晶粒を微細化する方法である。得られる微細結晶粒は、金型内のチャンネ
ル角度(Φ)
、チャンネル交差外周部の角度(Ψ)、プレス速度、プレス温度、
プレス回数、プレスごとの試料挿入方法、合金の種類や組成等に依存する。
N 回プレス後の試料が受けるひずみ量は、式(1)で表される。
・・・(1)
チャンネル角度(Φ)やチャンネル交差外周部の角度(Ψ)が小さいほ
ど、少ない回数で微細粒が得られる。
図1 ECAP 法のチャン
ネル各部の角度
【3】ECAP 法により結晶粒を微細化したアルミニウム合金
等軸微細結晶粒を得るためには多数回プレスする必要があるが、断面が正方形の棒状試料の場合は、
4種類の試料挿入方法(ルート A:毎回試料を同じ向きに挿入、ルート BA:プレスごとに挿入軸周り
に交互の向きに 90°回転、ルート BC:プレスごとに一方向に 90°回転、ルート C:プレスごとに 180°
回転)が考えられる。その中でルート BC が優れていることが分かった。
初期結晶粒経が 500μm の 99.99%純 Al を、室温、ルート BC で4回 ECAP すれば約 1.2μm の等
軸微細粒が得られた。この試料を 623K に加熱すると結晶粒が 100μm まで粗大化した。一方、
Al-3%Mg-0.2%Sc 合金では、室温、ルート BC で8回 ECAP すると約 0.2μm の微細粒が得られ、673K
まで1μm の微細粒を保った。
この室温、ルート BC で8回 ECAP した Al-3%Mg-0.2%Sc 合金を、673K でひずみ速度(試験速度)
3.3×10-2s-1 において引張試験すると、2280%の破断伸びを示した。純 Al、Al-3%Mg 合金、Al--0.2%Sc
合金の場合、同様の条件で結晶粒を微細化し、同様の条件で引張試験しても 400%以下の破断伸びしか
得られなかった。
Al-3%Mg-0.2%Sc 合金でも、プレス回数が8回を超えると試料に微細クラックが生じて破断伸びが
小さくなった。また、673K での引張試験のひずみ速度が 3.3×10-2s-1 より小さい場合は、試験中に結
晶粒が成長するため破断伸びが小さく、3.3×10-2s-1 より大きい場合は、試験中に超塑性に必要な粒界
すべりや結晶粒回転が十分に起こりえないため破断伸びが小さかった。
【4】まとめ
超強加工により結晶粒を微細化する方法では複雑な合金系を用いる必要がなく、リサイクルが容易
である。持続可能社会の実現のためにも、本方法の実用化が期待される。